月刊 ★ ねじまき 

川柳作家ベストコレクション『柴田比呂志』

夏空になるまで青を積み上げる
あおぞらに束になっても敵わない

柴田さんとは、二村典子さんのぺんき句会で初めてお会いした。川柳を書く者どうしが俳句の句会で出会うのだから、御縁とはおもしろい。句集の中には、常に〈青い空〉や〈空の青〉に心を寄せる柴田さんがいる。

いっぽんのポプラのように夢を見る
袋綴じ開けると波の音がする

女の人が少女の心のままでいるというのは嘘くさい気がするけれど、男の人はいつまでも少年の心を持ち続けることができるのかもしれない。

雨の日の新刊書から木の匂い

身の回りのあらゆるものに繊細に反応して句が生まれる。日々を暮らすということが川柳を書くことなのだと再確認させられる句集である。

じれったい距離に私が置いてある

いつだって自分は「じれったい距離」に置かれている。他ならぬ「私」自身によって。だからこそ柴田さんは、「私」以外のすべてを丁寧に見つめたり感じたりして、書くことに向かうのだろうか。

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# by nezimakikukai | 2018-06-12 23:01 | 火曜日にはねじをまく。 | Comments(1)

川柳作家ベストコレクション『柴田比呂志』

夏空になるまで青を積み上げるあおぞらに束になっても敵わない柴田さんとは、二村典子さんのぺんき句会で初めてお会いした。川柳を書く者どうしが俳句の句会で出会うのだから、御縁とはおもしろい。句集の中には、常に〈青い空〉や〈空の青〉に心を寄せる柴田さんがいる。いっぽんのポプラのように夢を見る袋綴じ開けると波の音がする女の人が少女の心のままでいるというのは嘘くさい気がするけれど、男の人はいつまでも少年の心を持ち続けることができるのかもしれない。雨の日の新刊書から木の匂い身の回りのあらゆるものに繊細に反応して句が生まれる。柴田さんの句集を読んでいると、日々を暮らすということが川柳を書くことなのだと再確認させられる。じれったい距離に私が置いてあるいつだって自分は「じれったい距離」に置かれている。他ならぬ私自身によって。その自意識が、「私」以外のすべてを丁寧に見つめ感じて、書くことに向かわせるのだろうか。
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# by nezimakikukai | 2018-06-12 23:00 | 火曜日にはねじをまく。 | Comments(0)

5月の句会結果について

5月の句会結果のまとめ方がいつもと違うので、あれ?と思われた方もいらっしゃるかもしれない。『ねじまき』#4で、句会における高得点句について語りあったのだが、#5でも引き続き、高得点句についてさらに検証し考えてみたいと思っている。そこで、5月は題詠「答」に1句だけ投句することとし、選に関しては、自分で1番から4番まで順位をつけて、5点、3点、1点、1点を入れる方法をとった。そして、結果報告には、合計点とその内訳を示した。さらに5月の句会では、それらの句と選について語り合った。もう一度8月に機会を設けて議論を深め、5月か8月の議論の内容を吟味したうえで、句会実況として掲載する予定である。点数に傾斜をつけたことで、同じ人数が選んでいても合計点が違ってくるのは、目に見えるこれまでとの大きな違いである。では、5点を1人が入れることと、1点を5人が入れることの違いをどう捉えるのか、今回はそこまでは議論が及んでいなかった。隔靴掻痒の趣は否めないというのが、全員の共通の感触だったようで、どこからともなく「リベンジ」の声があがった。で、もう一度の8月なのである。なぜだか不思議な期待感のようなものが湧いている。
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# by nezimakikukai | 2018-05-29 22:32 | 火曜日にはねじをまく。 | Comments(0)

第150回ねじまき句会

題詠「答」

歯ぎしりの答をさがすジョセフィーヌ/犬山高木
    2点(1点×2)
A4の紙ヒコーキできた答/水野奈江子
   20点(5点×2,3点×3,1点×1)
答えてる海鼠のような声出して/中川喜代子
   15点(5点×2,1点×5)
ファルセットでそっと答える太郎冠者/安藤なみ
    1点(1点×1)
水中に沈むそうめん答えなさい/なかはられいこ
   18点(5点×1,3点×4,1点×1)
答えなど求められてはいないのに/三好光明
    1点(1点×1)
飛沫あげ真鯉緋鯉が答えだす/早川柚香
    9点(5点×1,3点×1,1点×1)
DNA鑑定済みのご名答/岡谷樹
    3点(3点×1)
完璧じゃない合い鍵の口答え/青砥和子
   18点(5点×2,3点×2,1点×2)
ふれそうでふれないういろうの答え/妹尾凛
   16点(5点×2,3点×1,1点×3)
答えなんているかよアロエヨーグルト/瀧村小奈生
   14点(5点×2,1点×4)
人生よ何ぞや鳥羽の答志島/北原おさ虫
    5点(5点×1)
二三本猫の毛ついている答え/八上桐子
   16点(5点×1,3点×2,1点×5)
あれ以来目を合わせないのが答/丸山進
    2点(1点×2)

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# by nezimakikukai | 2018-05-26 18:13 | 句会結果報告 | Comments(0)

『水脈』第48号より。

『水脈』は北海道の柳誌である。北海道江別市。10年ほど立て続けに夏になると北海道に行った時期があったけれど、函館、小樽、札幌、苫小牧しか知らない。雑誌が届くと、知らない遠い土地がうんと近く感じられる。えべつ。

裏声になるまでまぶす郷ひろみ   落合魯忠

郷ひろみさんの声は独特だったけれど、裏声がまったく想像できない。だから、郷ひろみをまぶしても裏声になれないんじゃないかと心配になってくる。ということは、まぶしてもまぶしても裏声になれなくて…。はてしのない徒労感がおもしろい。そういえば、郷ひろみさんは歳をとることが想像できない方でもあった。今もやはり、裏声はなさそうである。

姉が編んだセーターアンダンテカンタービレ   田村あすか

6・4・5・6の21音なのだが、リズムは悪くない。撥音や伸ばす音が多く混じっているせいだろうか。お姉ちゃんがセーター編んでくれたんやけど簡単やったって。などと翻訳してみたりして楽しかった。

しゃちこばるなよ遠近の冬   一戸涼子

遠近と言えば一番に思いつくのが遠近両用レンズというのは、加齢のなせるわざ?遠近両用レンズが必要な眼は焦点が合いにくくてぼやける。しっかり見ようとしゃちこばる。もちろん、冬の景色もしゃちこばる。江別なら名古屋よりもっと。遠くの景色も近くの景色も寒々と凍っているだろう。遠江の冬は温暖そうだが、近江の冬はそれなりに手ごわい。「遠近の冬」が不思議でいろんなことを考えてしまった。

さくら餅うぐいす餅と橋渡る   酒井麗水

春だ!それだけでうれしい。「さくら餅うぐいす餅」のうきうきした感じは、スキップでも始めそうだ。橋を渡るという行為は、何かしらの変化をもたらす。橋の下には水の流れる音。一句が、「春」と歌っているように思われる。

あれそれとフリーズドライされたまま   浪越靖政

一番出てこなくて一番困るのは名前である。「あれ」や「それ」が多くなって、夫婦で「あれそれ」言っていると本題を忘れて大笑いしてしまうことがある。でも、フリーズドライだったんですね。腐ったりせずに長持ちするし、持ち運びも便利そうだし、じゃあ安心。フリーズドライして「あれ」にしただけなんだから悲観することもない。フリーズドライしておこう!

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# by nezimakikukai | 2018-05-22 22:54 | 火曜日にはねじをまく。 | Comments(0)

レトリックについての断片

野内良三氏の『レトリックと認識』の中から、気になったいくつかの断片(※)を引用する。あるときには、何の気もなく通り過ぎていた言葉が、別のときにはとても近しく感じられることがある。

※レトリックは世界(自己)を「語る」ための技術であるだけではない。世界を「発見する」ための方法でもある。世界を「読む」ための方法でもある。

※私たちの日常の発話は手垢にまみれた「慣用表現」からなっている。私たちは他人がすでに使った言葉を引用しながら、自分のおもいを表現する。ほとんどの場合はそれで十分に用は足りる。

※ところで、言葉というものは意外に融通無碍なものである。ふだん結びつかないものでも強引に並べてみると何となくそれらしい意味を帯びてくる。「冷たさ」と「情熱」とは常識的には矛盾する概念である。しかし「冷たい情熱」という言い方はある条件下では立派に通用するはずだ。

※現代レトリックは「世界/テキストを読む」認識者の立場を強調する。想像力を羽ばたかせると、この世界の事物間には思いもかけなかったような関係が結ばれることになる。それは新しい物の見方に通じる。

レトリックは単に効果的な表現のための技術ではなく、私たちに世界の新しい見方を示してくれる〈可能性〉なのだと思う。

  

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# by nezimakikukai | 2018-05-15 23:16 | 火曜日にはねじをまく。 | Comments(0)

4月の最高点句。

4月句会の題詠、雑詠の最高点句を振り返る。まず題詠から。題は「第」。

ラジオ体操第二までする町工場   早川柚香

ラジオ体操の「第二」が読み手を引き付け、「町工場」との組み合わせが郷愁をそそる絶景ポイントになったようだ。たしかに昭和人をくすぐる景色である。町工場の経営者の人の好さや、実直でつましい人々の暮らしぶりまで感じられて、いい雰囲気なのだ。ラジオ体操の第二に目をつけたところ、町工場という設定、どれもおもしろい。しかし、この句を選ばなかったなかはられいこさんの一言が何ともシャープだった。

「ラジオ体操第二からする町工場」だったら選んだかもしれない。

「まで」が「から」に変わるだけで世界の重力が変わる。助詞の偉大さを痛感するとともに、簡単に句をできあがらせてしまわないことの大切さを再確認した。

雑詠の最高点句はこちら。

しらばっくれてもつぶつぶまで苺   猫田千恵子

キュートな句である。しかし、苺を題材にしても決して甘ったるくはなっていない。その加減が気持ちよい。しらばっくれる苺…あ、あたし苺じゃないですから、ぷちぷち。ごまかしてもダメダメ、つぶのつぶまで、どうみたって苺、バレバレなんだから。かわいいけど、おかしい。


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# by nezimakikukai | 2018-05-08 23:27 | 火曜日にはねじをまく。 | Comments(0)

第149回ねじまき句会

題詠 「第」

1. おーい雲第二第三つぎ戻る/青砥和子

2. 君次第線一本をもたされる/米山明日歌

(2票:丸山 猫田)

3. ラジオ体操第二までする町工場/早川柚香

(8票:青砥 犬山 北原 大嶽 岡谷 妹尾 猫田 八上)

4. さあ第九タイコツチノコカンナ持て/丸山 進

(4票:青砥 中川 岡谷 米山)

5. 木曜の物語第五十二話/猫田千恵子

(4票:なかはら 瀧村 安藤 八上)

6. 第三の目はいつまでもクローバー/安藤なみ

(2票:魚澄 青砥)

7. たんぽぽの笑いをとって第一位/大嶽春水

(4票:なかはら 魚澄 三好 猫田)

8. 木魚聞き次第に息を吹き返す/三好光明

(3票:北原 中川 丹下)

9. 第一関節からサクラにとける/犬山高木

(4票:丸山 中川 早川 妹尾)

10.及第点おおきに我ら葱坊主/中川喜代子

(5票:瀧村 魚澄 北原 大嶽 米山)

11.転がせば 第第第九出るダイス/ 岡谷 樹

(2票:犬山 猫田)

12.菫から新緑までの式次第/なかはられいこ

(7票:瀧村 安藤 北原 早川 三好 岡谷 八上)

13.満開を過ぎて次第に穏やかに/丹下純

14.第三者委員会やら黄砂やら/瀧村小奈生

(6票:なかはら 安藤 早川 大嶽 岡谷 妹尾)

15.第3号被保険者の耳に雨/八上桐子

(7票:なかはら 丸山 安藤 中川 早川 三好 米山)

16.やめとけと第六感が言うてはる/北原おさ虫

(4票:瀧村 魚澄 犬山 丹下)

17.練乳のいちご次第に羽化の午/妹尾凛

(3票:丸山 丹下 三好)

18.しろうさぎ第三者委員会より帰る/魚澄秋来

(7票:青砥 犬山 丹下 大嶽 妹尾 八上 米山)

雑詠

1. 美しい骨格のパセリの仕草/妹尾凛

(7票:瀧村 犬山 丹下 中川 大嶽 八上 米山)

2. 花魁のようにぞろぞろ花筏/北原おさ虫

(4票:魚澄 青砥 丹下 早川)

3. 葉桜の話半分でも多め/瀧村小奈生

(8票:なかはら 丸山 安藤 大嶽 岡谷 妹尾 八上 米山)

4. 背中から脱皮の途中新入社員/丹下純

(2票:魚澄 犬山)

5. 珈琲を持って座ればここもカフェ/魚澄秋来

(3票:安藤 北原 三好)

6. どこで折り返せば届くのかさくら/なかはられいこ

(2票:丸山 青砥)

7. つめたいのは春か腸内フローラ/八上桐子

(6票:犬山 早川 大嶽 岡谷 妹尾 猫田)

8. 春の雪 ロールキャベツの具になるの/岡谷 樹

(2票:猫田 米山)

9. おとりかえ明日は出来ます五月晴れ/中川喜代子

(1票:魚澄)

10.本日の売りは小女子ひとつかみ/安藤なみ 

(2票:青砥 三好)

11.モクレン散ったりトランペット鳴ったり/犬山高木

10票:なかはら 瀧村 青砥 安藤 丹下 中川 早川 三好 猫田 八上)

12.壊れても部品交換できぬ膝/三好光明

13.蜜蜂のあこがれ 英国ガーデン/大嶽春水

(1票:北原)

14.夢は立ち止まる海の手前あたり/米山明日歌

(3票:なかはら 丸山 中川)

15.のぼらない月が欄干撫でてゆく/青砥和子

(5票:丸山 魚澄 丹下 岡谷 猫田)

16.しらばっくれてもつぶつぶまで苺/猫田千恵子

11票:なかはら 瀧村 北原 中川 早川 三好 大嶽 岡谷 妹尾 八上 米山)

17.胡蝶蘭分類すれば忍者系/丸山 進

(5票:瀧村 安藤 犬山 北原 妹尾)

18.ネイルには梨地クールな小宇宙/早川柚香


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# by nezimakikukai | 2018-05-04 21:37 | 句会結果報告 | Comments(0)

第1回「あつたの杜」連句まつり

とき  平成30年4月27日(金) 10時30分~16時
ところ 名古屋市中小企業振興会館(吹上ホール)4F第2会議室
会費  2000円(昼食代含む)

明日、名古屋で連句まつりが行われます。連句発祥の地名古屋で、連句という文芸を伝えていこうという活動が始動しました。連句まつりは、今回が初めての開催となりますが、宮中学(熱田区)での連句の授業は今年が3年目となります。光村図書の『国語1』に初めて「連句」という言葉が登場しました。短歌・俳句は、現代の作品も含めて中学校の国語の教科書に取り上げられています。川柳だけが、なぜか江戸時代の作品に限られていて変な感じだったのですが、連句は全く取り上げられることさえありませんでした。それを考えると、ずいぶん大きな変化ではあります。名古屋での第1回連句まつりは明日。急に思い立つことがおありでしたら、飛び入りでもかまいませんので、遊びにお越しください。

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# by nezimakikukai | 2018-04-26 18:41 | 火曜日にはねじをまく。 | Comments(0)

川柳作家ベストコレクション『笹田かなえ』

そのつもりなくてもちょっとかたつむり
花束で殴るだなんてアルデンテ
この先はきっと無意味にステンレス

とにかくリズムがよくて楽しい。わらべ歌の歌詞だとか早口言葉とか呪文とかみたいに。けれども、言葉は突拍子もない脈絡で並んでいるわけではなく、「かたつむり」のダンマリ感や、「アルデンテ」の固さ、「ステンレス」のとりつくしまのない無機質さなど、わずかなところで現実とつながっていて、浸透力の高いナノ化粧水のように、すっと馴染んで吸収される。かなえさんの言葉の持つ不思議な力である。

ほっといてほしいところにサイゼリヤ

これも「サイゼリヤ」の選択が素敵。「いらないよ、サイゼリヤ」と「あってよかった、サイゼリヤ」の共存している感覚がピッタリだ。ほっといてほしいところに踏み込んでくれる人のやさしさなどということまで考えてしまう。

アルカイックスマイル 秋が深くなる

aで始まりruで終わる10音と8音の組み合わせ。アルカイックスマイルとは深まる秋のような笑みなのか。まあ、ウルトラマンかもしれないけど。ウルトラマンと秋か・・・かなえさんの言葉から自由にひろがるとりとめもないあれやこれや。そのあれやこれやをプレゼントしてくれるのが笹田かなえさんの川柳のように思われる。

やわらかい場所から暮れる春の暮れ
暗かったことだけ思い出す真昼

やわらかさと暗さに、かなえさんは敏感に反応する。それは、わたしたちに親しいやわらかさと暗さである。

六条御息所的今夜

六条御息所の漆黒の長い髪のような黒洞洞たるたる夜。今夜の闇は六条御息所的なのだ。どこまでも続く暗くてやわらかい闇である。

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# by nezimakikukai | 2018-04-24 13:21 | 火曜日にはねじをまく。 | Comments(0)

川柳作家ベストコレクション『守田啓子』

広がってゆくのあたしのほころびが
交番に届くわたしの欠けたとこ
さらされるあたしのもふもふした部分
綿棒で哀しいとこを触られる
とんがりがあるかときどき触れてみる

かなしいことやうれしいこと、しっくりこない感じや喪失感。それらを身体的な感覚として受け止めたことろから生まれてくる川柳である。それは、とてもシリアスなものであるはずだが、、守田敬子さんの句からは深刻さやジメジメしたものは感じられない。「交番に届く」や「綿棒で」、あるいは「もふもふした部分」という言葉の装置をくぐることで、確かな共感を呼び起こしつつ、読む者をくすっと笑わせてくれるからである。

こんなとき線香花火持たされる

「こんなとき」、「線香花火」、「持たされる」の「れる」の関係が絶妙。「こんなとき持たされる」ものとしての線香花火、「線香花火持たされる」のがこんなときであったということ、そして自らの意志ではなく「持たされる」という受け身であること。余儀なく、しかもどこか明るい。繊細だがへこたれない生命力を感じる。

他人にも自分にもこんにゃくである

と啓子さんは言うのだが。

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# by nezimakikukai | 2018-04-14 21:16 | 火曜日にはねじをまく。 | Comments(0)

川柳作家ベストコレクション『ひとり静』

句集のそこいらじゅうから静さんの独り言が聞こえてくる。

 お邪魔にはならないポだと思います

邪魔にならない「ポ」って何なのよと尋ねたら、「えーっ!ポはポやん」と真っ直ぐな眼差しが返ってきそう。ついつい、そんなポがあるような気がしてしまう。「お邪魔にはならない」のは「ポ」でしか実感できないところに、この句のもつ力がある。

 はっきりといいますかもめ足りません

「かもめ足りません」なんて「はっきりといいます」というようなことでもないだろう。第一、かもめが足りない状況ってどんな状況なのか。どうでもいいことだけど、わかる気がするのがこわい。

 支持しますゴロンゴロンとくる楕円

「くる」かどうかは知らないが、確かに楕円が転がれば「ゴロンゴロン」である。でも、支持するの?いや、静さんは間違いなく支持している。

よくわからないままに、読む者の心の端くれをつかまえる独り言の群れである。

 忸怩たるものでへこんでいる座布団

「忸怩」は ji-ku-ji 。座布団は ji-ku-ji を秘め、静さんは ji-ku-ji とつぶやく。

 雨だれもわたしも数えられている

数えてもらえれば上々か。雨だれを数えるのは、「わたし」。その「わたし」を数えるのは誰なのか。

さびしさのようなもの、かなしみのようなもの、痛みのようなもの。静さんの句集を読んでいると、その「ようなもの」と一緒に生きていくのが自然なのだと素直に思うことができる。


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# by nezimakikukai | 2018-04-03 22:48 | 火曜日にはねじをまく。 | Comments(0)



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