月刊 ★ ねじまき 

夏の終わり方

母音だけ残して夏物を仕舞う     月波与生
    (『おかじょうき』2018年9月号より)

子どもの頃は、夏が終わりを感じることができた。今は、ついうかうかと通過してしまう。もう10月だというのに半袖の服を片付けることができずに、ぐずぐずしている。秋が短くなったと言う人も多い。昔は、夏物を仕舞い秋冬物を出す衣替えは季節の変わり目のイベントだった。エアコンのある暮らしがあたりまえになり、クローゼットが充実して、「夏物を仕舞う」という行為も曖昧になりつつある。昭和を感じさせるノスタルジックな行為と言ってもいいかもしれない。こんな夏の終わり方に惹かれるのは昭和人の証だろうか。この句の「母音だけ残して」のせつなさ、乾いた喪失感の表現が魅力的だ。この母音は、a だと私は確信している。

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# by nezimakikukai | 2018-10-09 10:44 | 火曜日にはねじをまく。 | Comments(0)

はぎ・すすき・・・

計算の前の芒と後の萩      なかはられいこ
    (第154回ねじまき句会 題詠「算」より)

秋の七草である。私は、〈はぎ・すすき・ききょう・なでしこ・おみなえし・ふじばかま・くず〉と覚えているので、芒と萩が並んで出てくるのがとても自然に感じる。計算の前と後で変化があるというのはイメージしやすい。では、前は何で後は何か。「前の芒と後の萩」っておもしろいじゃない!意味がどうこうじゃなくて、口ずさんで楽しい。秋の七草は花を目で見て楽しむと言われる。その花の中では芒の花だけがずいぶん異質なので、その点でも前に芒を持ってくることで、前と後の変化というイメージをつくりやすいと思う。「後の萩」に関しても、桔梗・撫子・女郎花・藤袴では音数が合わないのもさることながら、花の印象が強くなりすぎる。葛は食用という感じがして、これもまた芒の相棒にはなりづらい。つらつら考えてみると「萩」にまさるものはないのである。するりと口をついて出たような愛唱性がありつつ、非常によく考えられた一句ではないだろうか。

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# by nezimakikukai | 2018-10-08 19:47 | 火曜日にはねじをまく。 | Comments(0)

「レントゲン・レンタル」降臨

レントゲン・レンタルほっとけばすぐ帰る   二村典子
         (第154回ねじまき句会 雑詠より)

説明がつかないのである。けれども素通りできない。何に呼ばれるのかわからないが、句の引力に引き寄せられる。「レントゲン・レンタル」で放り出されて、「ほっとけばすぐ帰る」で軽く突き放される。言ってみれば、投げやりな感じが心地よいというところだろうか。「ほっとけばすぐ帰る」ということしか言っていないと思うのだが、それに対して「レントゲン・レンタル」が音だけでくっついているところがおもしろい。ren/renという共通の音を含む二つの単語、「レントゲン」と「レンタル」は意味としては結びつかない。この無責任な単語の選択と「ほっとけばすぐ帰る」への流れが、妙に肌に馴染むのである。後で作者に聞いたところ、「レントゲン・レンタル」がするすると降りて来たらしい。そっちが先か!立ち現れた言葉に「ほっとけばすぐ帰る」を付けたということなのだが、聞いてみればそれはそれで納得できる。もし、付けた言葉が「ほっとけばすぐ帰る」でなければ句の引力は発生しないのだから、そこに作者の力が働いたというべきであろう。

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# by nezimakikukai | 2018-10-07 18:00 | 火曜日にはねじをまく。 | Comments(0)

第154回ねじまき句会

課題「算」

1. ピンク色なのでポイント加算する/猫田千恵子

(4票:なかはら 瀧村 大嶽 妹尾)

2. 数はいま詩となるカシオ計算機/八上桐子

(6票:なかはら 二村 青砥 岡谷 大嶽 猫田)

3. 筆算のまだ傾いていく背中/瀧村小奈生

(8票:丸山 安藤 犬山 八上 大嶽 妹尾 猫田 水野)

4. 検算で変わらなかった愛の粒/水野奈江子 

(1票:安藤)

5. いもうとが緑になって泣く誤算/青砥和子

(4票:丸山 中川 三好 米山)

6. 計算の前の芒と後の萩/なかはられいこ

(8票:瀧村 二村 青砥 中川 八上 米山 猫田 水野)

7.目算で三粒を拾うミトンの手/岡谷

(3票:丸山 三好 水野)

8.算盤の瞳ここではないどこか/妹尾凛

(2票:なかはら 水野)

9.その木だけカラスの群れる植木算/米山明日歌

(8票:瀧村 青砥 安藤 中川 三好 八上 妹尾 猫田)

10.算段がついて土蔵をひとまわり/安藤なみ

(5票:二村 犬山 八上 米山 大嶽)

11.算段がつかぬ月夜のつるとかめ/中川喜代子

(3票:なかはら 岡谷 妹尾)

12.算盤が嬉キと泣くイケない遊び/丸山 進

(2票:犬山 三好)

13.駈け廻る誤算ご破算通過算/三好光明

(3票:瀧村 岡谷 米山)

14.ういろうを切り分ける母の算術/大嶽春水

(3票:丸山 安藤 中川)

15.コノタビハ酢酸引き算エフェドリン/犬山高木

(1票:二村)

16.算数よりも制服が似合わない/二村典子

(3票:青砥 犬山 岡谷)

雑詠

1. ハートビートがきこえる私鉄沿線/犬山高木

(3票:中川 妹尾 水野)

2. 神無月聖母マリヤの上に月/中川喜代子 

(4票:青砥 岡谷 米山 大嶽)

3. そうなのとマダガスカルな顔でいう/米山明日歌

(5票:丸山 安藤 中川 妹尾 猫田)

4. レントゲン・レンタルほっとけばすぐ帰る/二村典子

(3票:なかはら 瀧村 三好)

5. 止まり木になろう小鳥はやって来る/三好光明

(2票:青砥 大嶽)

6. 玉葱のタマとネギとで紅白戦/丸山 進

(1票:青砥)

7. 陽が沈むきょうの誰かを道ずれに/安藤なみ

(3票:なかはら 中川 水野)

8.縦横に風の悪さを責めている/岡谷

(3票:丸山 二村 安藤)

8. 特売の玉子の中のマリアさま/青砥和子

(6票:なかはら 二村 犬山 八上 妹尾 猫田)

10.母国語は真実になるインタビュー/水野奈江子

(2票:岡谷 大嶽)

11.くるくると梨剥く夜はあかるくて/瀧村小奈生

(10票:なかはら 丸山 青砥 安藤 犬山 八上 米山 妹尾 猫田 水野)

12.とまらない水寝ころぶと見える耳/八上桐子

(6票:瀧村 二村 犬山 岡谷 三好 猫田)

13.かろうじてキーホルダーの鳥の青/なかはられいこ

(7票:丸山 瀧村 二村 岡谷 三好 八上 米山)

14.ひじきふくらむ闇のように段々/妹尾凛

(7票:瀧村 安藤 犬山 中川 八上 米山 大嶽)

15.遊泳禁止 河童ですが何か/猫田千恵子

(1票:三好)

16.多肉植物うなる真夏日つづく/大嶽春水

(1票:水野)


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# by nezimakikukai | 2018-09-28 17:25 | 句会結果報告 | Comments(0)

THANATOS石部明 4/4

小池正博さんと八上桐子さんの心のこもったお仕事である。石部明さんの作品をこうして読ませていただけるのは本当にうれしい。わたしの言葉が触れたことのない世界だ。ひんやりと静かに、しかもひりひりと研ぎ澄まされて。

眼球を放れば粒になって散る   石部明

からだは、わたしのものでありながら、いつでも、たやすくわたしから分離する。眼球もまた然り。粒になって散るものを皮膚感覚で受け止めながら、闇の深さを感じている。そんなことを想像した。
THANATOSの表紙の黒が少し明るくなったようだ。石部さんの作品を読むたびに、闇の中の光あるいは光のの中に潜む闇ということを考えてしまう。

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# by nezimakikukai | 2018-09-19 23:07 | 火曜日にはねじをまく。 | Comments(0)

芙蓉覗けば 人の声する    なかはられいこ

芙蓉の美しい季節だからというわけではなく、最近、この句と何度目かの親しい時間を過ごしている。最初に出会ったのは、川柳を始めた頃だから十数年前のことだ。これまでに何度芙蓉を覗き込み、何度声を聞いたことか。「人の声する」と読めば、たちまちほっと安心してしまう。わたしにとってはそういう句である。決して派手な句ではないけれど、大切な一句だ。五七五・十七音(この句の場合は、七七・十四音だが)は短い。だからこそ、邪魔にならずに身につけていて、身につけていることすら忘れて過ごしているのではないか。あるとき、ふと思い出して取り出してながめたり手に触れたりしてみることもできる。なかなか、ありがたい代物である。
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# by nezimakikukai | 2018-09-13 17:42 | 火曜日にはねじをまく。 | Comments(0)

残像

まなぶたを閉ぢて芍薬落ちてくる   宮本佳世乃
             (『オルガン』14号より)

わたしの視界に芍薬の無数の花弁が現れる。ゆっくりと落ちてくる。そして落ち続ける。残像ということを思う。何かが起こってしまった後でその少し前の光景が鮮明に立ち現れることがある。何度も何度も、まるで復習するようにその光景がくりかえされる。「あのこと」が起こる前の光景。それは確実に起こってしまってやり直すことはできないと承知しているのに、残像は繰り言のように消えない。芍薬の紅の鮮明さが、こんなことを想起させたのだろうか。読むことは、読んでいる私自身ですら思いがけないものを運んでくることがあって不思議だ。
『オルガン』はいま最も気になる雑誌のひとつである。14号では、大井恒行さん、浅沼璞さん、宮崎莉々香さんによる対談が、とても楽しくて興味深かった。柳本々々さんと浅沼璞さんの往復書簡も毎回楽しみにして読ませていただいている。『ねじまき』も5号に向けてやんわりと始動したので、素敵な雑誌を読むとちょっと緊張する。

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# by nezimakikukai | 2018-09-10 11:37 | 火曜日にはねじをまく。 | Comments(0)

丸栄のチリメンメリンスドンスオビ   中川喜代子

2018年6月30日、江戸時代から続く名古屋の老舗デパートのひとつ、丸栄が閉店した。掲句は、生粋の名古屋人(いまは瀬戸の住人だが)中川さんの名古屋愛を感じさせるキュートな一句である。縮緬、メリンス、緞子帯とは、丸栄の前身が十一屋という呉服屋さんだったことからきているのだろう。「チリメンメリンスドンスオビ」と片仮名表記されることで、意味を離れた音となって、手毬歌か何かの歌詞のように心地よく耳に響く。よそ者のわたしとちがって、栄の丸栄とともに名古屋で暮らしてきた人たちにとって、単なる百貨店の閉店や時代の変遷という以上の衝撃的なできごとだったようで、連日のようにテレビでも報道されていた。丸栄閉店は、わたしのなかに、中川さんのこの句とともに残っていくのだなと思う。
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# by nezimakikukai | 2018-08-28 23:07 | 火曜日にはねじをまく。 | Comments(0)

四音彷徨

思いあたる節がどこにもないきゅうり   瀧村小奈生

7月句会の題詠「節」の句である。選句理由などについて話しているときに、「どこにも」という部分が「あんまり」なんかのほうがおもしろいのでは?という話が出た。そうかなあ?→うん、たしかに!というのが作者であるわたしの心の動きである。「どこにも」のところをどうするかについては、投句するぎりぎりまで一番悩んだところだったのだ。「ほとんど」「ちっとも」「すこしも」「全然」「そんなに」……そういえば、「あんまり」は考えていなかった。いい塩梅の軽い感触だと思われる。

思いあたる節があんまりないきゅうり

こっちでいくかなあ。と、他の候補も含めてお直しすることを考えた。そこからが長いのである。とにかく確定できない。きょうAをよいと思ったのに、あすはBに傾くといった次第だ。そんなに考えるほどの句か?という疑問もわいてきたりして、いよいよ決まらない。

思いあたる節がーーーーないきゅうり

現在はこんな宙ぶらりんなことになっている。

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# by nezimakikukai | 2018-08-21 19:27 | 火曜日にはねじをまく。 | Comments(2)

上弦の月

昨夜は何十日かぶりにエアコンを入れずに寝た。朝起きても空気がすがすがしい。そのせいか、不意に月のことが気になる。暦では、きょうは上弦の月。酔っぱらって俳句をひねる〈僕〉と髪からよい匂いをさせる〈君〉が見たのも上弦の月だったと、愚にもつかないことをぼんやりと思う。お盆休みも明けて、季節は確かに秋へと向かっている。わたしが仕事やら暑さやらでジタバタしている間にも、確実な仕事をなさる方たちのところから、きっちりと川柳誌が届けられる。手にすると自然に頭が下がる。『ねじまき』もそろそろ第5号に向けて始動しなければ!

しんしんとうるさい夜よ 黙れ   佐藤みさ子

『川柳 杜人』2018夏号より。「しんしんとうるさい」が、逆説的な言辞という以上のリアリティーを持っている。「黙れ」と言わずにはいられない作中主体がとらえられている静寂の深さに思わず共感してしまう。きょうの最も気になる一句である。

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# by nezimakikukai | 2018-08-18 14:01 | 火曜日にはねじをまく。 | Comments(0)

スウィングする言葉たち

セレクション柳人のシリーズから『筒井祥文集』を開く。

追伸のそれは見事なジャズである

「見事なジャズ」って?金管入りのビッグバンドで演奏されるやつかなあ。しかも「追伸」がね。本文は何てことなくて、追伸が豪華絢爛なんて意味わからないよ!と突っ込みながら、すっかり術中にはまってしまった感じだ。この句があるからというわけではなく、筒井祥文さんの句集は、次々に繰り出される句が不思議なリズムを持っていて、心地よく揺れている。まさに、スウィング・ジャズの世界なのだ。

ああ言えばこう言う月とそこらまで
アホらしいことでしたケンケンで帰る

どこまでもついてくるお月さま。アホらしくてケンケン。力が入っていない気持ちよさと、ある種のあきらめと、実は繊細でシャイな心。

小半日この世へ垂れている紐と
公園の傘をすぼめたような秋

何となくすまなそうな口ぶりだ。改めて読み返すと、今までとはちがった作家の表情が見えてくるようでうれしくなる。

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# by nezimakikukai | 2018-08-09 20:01 | 火曜日にはねじをまく。 | Comments(0)

『垂人』33より。

俳句、短歌、川柳、連句、詩。『垂人』には限定がない。心から楽しんで遊ぶ人たちの息遣いが感じられる雑誌である。

穭田のなかに小さな駅舎あり今捨てられし空き缶の音  中西ひろ美

「多摩にて」と題された17作の作品は、形式は短歌だが、31音の俳句のようである。五七五の発句に脇句がついたかたちなのだろうか。31音の姿の自然さが素敵だ。

くねくねとしている春の縫い目なり          広瀬ちえみ

川柳書きのちえみさんの句からは、やはり、なじみのある川柳の匂いがする。

「二字の句会」(その日の句会に出た句の2文字だけ変えて句を作る趣向で遊ぶ句会)や、ふだん川柳を書かないメンバーによる「垂人杯争奪 川柳句会」といった自由で真剣な試みがおもしろい。
毎号変わる表紙の写真も届けられる内容も、待ち遠しい一冊だ。

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# by nezimakikukai | 2018-08-02 14:35 | 火曜日にはねじをまく。 | Comments(0)



川柳句会「ねじまき句会」の公式サイトです
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