月刊 ★ ねじまき 

カテゴリ:火曜日にはねじをまく。( 218 )

THANATOS石部明 4/4

小池正博さんと八上桐子さんの心のこもったお仕事である。石部明さんの作品をこうして読ませていただけるのは本当にうれしい。わたしの言葉が触れたことのない世界だ。ひんやりと静かに、しかもひりひりと研ぎ澄まされて。

眼球を放れば粒になって散る   石部明

からだは、わたしのものでありながら、いつでも、たやすくわたしから分離する。眼球もまた然り。粒になって散るものを皮膚感覚で受け止めながら、闇の深さを感じている。そんなことを想像した。
THANATOSの表紙の黒が少し明るくなったようだ。石部さんの作品を読むたびに、闇の中の光あるいは光のの中に潜む闇ということを考えてしまう。

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by nezimakikukai | 2018-09-19 23:07 | 火曜日にはねじをまく。 | Comments(0)

芙蓉覗けば 人の声する    なかはられいこ

芙蓉の美しい季節だからというわけではなく、最近、この句と何度目かの親しい時間を過ごしている。最初に出会ったのは、川柳を始めた頃だから十数年前のことだ。これまでに何度芙蓉を覗き込み、何度声を聞いたことか。「人の声する」と読めば、たちまちほっと安心してしまう。わたしにとってはそういう句である。決して派手な句ではないけれど、大切な一句だ。五七五・十七音(この句の場合は、七七・十四音だが)は短い。だからこそ、邪魔にならずに身につけていて、身につけていることすら忘れて過ごしているのではないか。あるとき、ふと思い出して取り出してながめたり手に触れたりしてみることもできる。なかなか、ありがたい代物である。
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by nezimakikukai | 2018-09-13 17:42 | 火曜日にはねじをまく。 | Comments(0)

残像

まなぶたを閉ぢて芍薬落ちてくる   宮本佳世乃
             (『オルガン』14号より)

わたしの視界に芍薬の無数の花弁が現れる。ゆっくりと落ちてくる。そして落ち続ける。残像ということを思う。何かが起こってしまった後でその少し前の光景が鮮明に立ち現れることがある。何度も何度も、まるで復習するようにその光景がくりかえされる。「あのこと」が起こる前の光景。それは確実に起こってしまってやり直すことはできないと承知しているのに、残像は繰り言のように消えない。芍薬の紅の鮮明さが、こんなことを想起させたのだろうか。読むことは、読んでいる私自身ですら思いがけないものを運んでくることがあって不思議だ。
『オルガン』はいま最も気になる雑誌のひとつである。14号では、大井恒行さん、浅沼璞さん、宮崎莉々香さんによる対談が、とても楽しくて興味深かった。柳本々々さんと浅沼璞さんの往復書簡も毎回楽しみにして読ませていただいている。『ねじまき』も5号に向けてやんわりと始動したので、素敵な雑誌を読むとちょっと緊張する。

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by nezimakikukai | 2018-09-10 11:37 | 火曜日にはねじをまく。 | Comments(0)

丸栄のチリメンメリンスドンスオビ   中川喜代子

2018年6月30日、江戸時代から続く名古屋の老舗デパートのひとつ、丸栄が閉店した。掲句は、生粋の名古屋人(いまは瀬戸の住人だが)中川さんの名古屋愛を感じさせるキュートな一句である。縮緬、メリンス、緞子帯とは、丸栄の前身が十一屋という呉服屋さんだったことからきているのだろう。「チリメンメリンスドンスオビ」と片仮名表記されることで、意味を離れた音となって、手毬歌か何かの歌詞のように心地よく耳に響く。よそ者のわたしとちがって、栄の丸栄とともに名古屋で暮らしてきた人たちにとって、単なる百貨店の閉店や時代の変遷という以上の衝撃的なできごとだったようで、連日のようにテレビでも報道されていた。丸栄閉店は、わたしのなかに、中川さんのこの句とともに残っていくのだなと思う。
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by nezimakikukai | 2018-08-28 23:07 | 火曜日にはねじをまく。 | Comments(0)

四音彷徨

思いあたる節がどこにもないきゅうり   瀧村小奈生

7月句会の題詠「節」の句である。選句理由などについて話しているときに、「どこにも」という部分が「あんまり」なんかのほうがおもしろいのでは?という話が出た。そうかなあ?→うん、たしかに!というのが作者であるわたしの心の動きである。「どこにも」のところをどうするかについては、投句するぎりぎりまで一番悩んだところだったのだ。「ほとんど」「ちっとも」「すこしも」「全然」「そんなに」……そういえば、「あんまり」は考えていなかった。いい塩梅の軽い感触だと思われる。

思いあたる節があんまりないきゅうり

こっちでいくかなあ。と、他の候補も含めてお直しすることを考えた。そこからが長いのである。とにかく確定できない。きょうAをよいと思ったのに、あすはBに傾くといった次第だ。そんなに考えるほどの句か?という疑問もわいてきたりして、いよいよ決まらない。

思いあたる節がーーーーないきゅうり

現在はこんな宙ぶらりんなことになっている。

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by nezimakikukai | 2018-08-21 19:27 | 火曜日にはねじをまく。 | Comments(2)

上弦の月

昨夜は何十日かぶりにエアコンを入れずに寝た。朝起きても空気がすがすがしい。そのせいか、不意に月のことが気になる。暦では、きょうは上弦の月。酔っぱらって俳句をひねる〈僕〉と髪からよい匂いをさせる〈君〉が見たのも上弦の月だったと、愚にもつかないことをぼんやりと思う。お盆休みも明けて、季節は確かに秋へと向かっている。わたしが仕事やら暑さやらでジタバタしている間にも、確実な仕事をなさる方たちのところから、きっちりと川柳誌が届けられる。手にすると自然に頭が下がる。『ねじまき』もそろそろ第5号に向けて始動しなければ!

しんしんとうるさい夜よ 黙れ   佐藤みさ子

『川柳 杜人』2018夏号より。「しんしんとうるさい」が、逆説的な言辞という以上のリアリティーを持っている。「黙れ」と言わずにはいられない作中主体がとらえられている静寂の深さに思わず共感してしまう。きょうの最も気になる一句である。

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by nezimakikukai | 2018-08-18 14:01 | 火曜日にはねじをまく。 | Comments(0)

スウィングする言葉たち

セレクション柳人のシリーズから『筒井祥文集』を開く。

追伸のそれは見事なジャズである

「見事なジャズ」って?金管入りのビッグバンドで演奏されるやつかなあ。しかも「追伸」がね。本文は何てことなくて、追伸が豪華絢爛なんて意味わからないよ!と突っ込みながら、すっかり術中にはまってしまった感じだ。この句があるからというわけではなく、筒井祥文さんの句集は、次々に繰り出される句が不思議なリズムを持っていて、心地よく揺れている。まさに、スウィング・ジャズの世界なのだ。

ああ言えばこう言う月とそこらまで
アホらしいことでしたケンケンで帰る

どこまでもついてくるお月さま。アホらしくてケンケン。力が入っていない気持ちよさと、ある種のあきらめと、実は繊細でシャイな心。

小半日この世へ垂れている紐と
公園の傘をすぼめたような秋

何となくすまなそうな口ぶりだ。改めて読み返すと、今までとはちがった作家の表情が見えてくるようでうれしくなる。

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by nezimakikukai | 2018-08-09 20:01 | 火曜日にはねじをまく。 | Comments(0)

『垂人』33より。

俳句、短歌、川柳、連句、詩。『垂人』には限定がない。心から楽しんで遊ぶ人たちの息遣いが感じられる雑誌である。

穭田のなかに小さな駅舎あり今捨てられし空き缶の音  中西ひろ美

「多摩にて」と題された17作の作品は、形式は短歌だが、31音の俳句のようである。五七五の発句に脇句がついたかたちなのだろうか。31音の姿の自然さが素敵だ。

くねくねとしている春の縫い目なり          広瀬ちえみ

川柳書きのちえみさんの句からは、やはり、なじみのある川柳の匂いがする。

「二字の句会」(その日の句会に出た句の2文字だけ変えて句を作る趣向で遊ぶ句会)や、ふだん川柳を書かないメンバーによる「垂人杯争奪 川柳句会」といった自由で真剣な試みがおもしろい。
毎号変わる表紙の写真も届けられる内容も、待ち遠しい一冊だ。

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by nezimakikukai | 2018-08-02 14:35 | 火曜日にはねじをまく。 | Comments(0)

「文法の時間」

『川柳カモミール』2号には、カモミール句会における文法的な視座から作品を考えようとする試みが取り上げられている。国語学の先生を招いての作品分析と考察へのチャレンジである。全76単語のうち名詞が34(固有名詞、代名詞なども含めて)というのは、多いような普通のようなというのが実感である。1句の中の、どの部分にどの品詞が多いかという分析もされていて、冒頭の単語はすべてが名詞、つまり名詞100パーセントである。これは偶然ということを勘定に入れてもおもしろい結果だと思う。何が見えたかと言われると困る。何を見つけるかはこれからの課題になるだろう。アクションを起こしてみること。ジタバタもがいてみること。何かせずにはいられなくて、とりあえず何かやってみようとする人たちが大好きである。
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by nezimakikukai | 2018-07-24 22:56 | 火曜日にはねじをまく。 | Comments(0)

『川柳カモミール』No.2

猛暑日の続く名古屋に、北の国から心のこもった川柳誌が届いた。
『カモミール』の第2号である。

8Bの鉛筆尖ってはいけません     三浦潤子
視野の端で振り払われているしずく   守田啓子
タオル振り回して九月の未来形     細川静
母さんを拾って歩く秋の暮れ      滋野さち
新年の悪しき床しきふくらはぎ     笹田かなえ

メンバーそれぞれの20句の中から、私のお気に入りを挙げさせていただいた。まっ白な1冊を手にして、とてもうれしい気持ちになる。意外なくらいぶ厚いページを、1ページずつ繰りながら丁寧に読み進めると、ますますカモミールと親和していく。あまりにも馴染みがよいので、メンバーは全員女性かと思い込んでいたのだが、細川さんは男性だとかなえさんに教えていただいた。静さま、勘違いしてごめんなさい!それにしても、この句集から伝わってくる気持ちよい空気は、どこからくるのだろう。おだやかな信頼関係の中で、ああでもないこうでもないと、何かを見つけようとして真剣になっている・・・そんな空気感が伝わってくるのである。「おーい!」と北に向かって呼びかけたくなる。

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by nezimakikukai | 2018-07-23 16:06 | 火曜日にはねじをまく。 | Comments(1)



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