月刊 ★ ねじまき 

カテゴリ:火曜日にはねじをまく。( 238 )

そこそこの幽霊になりそこいらに  広瀬ちえみ

最近は、ずっとこの「幽霊」にとりつかれている。バス停でバスを待っているときに「そこそこの・・・」、ふっと箸をとめた瞬間に「そこそこの・・・」、髪を洗いながら「そこそこの・・・」。理由はまったくわからない。なぜ突然立ち現れたのか。あまりに親しくそばにいることになったので、改めてこの句を眺めてみる。これは、どこからどうみても川柳だぞと思う。季語も切れ字もないから俳句ではないなどという話ではない。もっと根本的なところで川柳が匂う。もちろん、これはいい匂い。幽霊がちっともこわくなくて親近感を覚えてしまうところも、自由な空気感も、いろいろ。ニンジンをトントン刻みながら思うのだ。「そこそこでいいのよ。そこそこの幽霊になって、そこいらにいることにするわ、わたし。そんなもんでしょ。」すんごい説得力だ。なおかつ説教臭くない!天国に行ったりしなくて、幽霊になってそこいらにいちゃっていいのである。たった1句でも、誰かの暮らしの中にぬっと現れて居ついてしまうような句を書いてみたいなあ。
by nezimakikukai | 2019-03-19 16:04 | 火曜日にはねじをまく。 | Comments(0)

捨ておけ 救えるほどの闇だ   樹萄らき

らきちゃん(会ったこともないのに、馴れ馴れしくてすみません!)の『2018』のタイトルであり、その中の1句でもある。それにしても、「捨ておけ」とは水戸黄門ばりの時代がかった口調だ。「救えるほどの闇」だから放っておいてもだいじょうぶらしい。うっすらと明るい闇を思い浮かべる。だいたい、わたしたちの周りにはこんな闇は山ほどあって、たいていのことはそんなに深刻にならなくても平気なのだと思う。じゃあ、救えないような闇は?それは、アウトだ。だって救えないのだから、残念だけどあきらめるほかない。ということは、どちらの場合でも、わたしたちには、することがないのだ。それはそれで、妙に説得力がある。あ、もしかしたら、救えない闇が相手のときは、黄門様が出てきて助けてくれるかも。それならそれでOKだ。だれかの1句で、こんなふうにいろいろ考えられるって、面白いなあと思う。それにしても、らきちゃんはすごい。毎年ちゃんと自分の1年間の作品をまとめ、通り過ぎたことたちをエッセイにして書き留めて1冊にしているのだから。表紙に葡萄色で印刷された〈樹萄らき〉という名前を眺めながら、自分のいい加減さが恥ずかしくなる。なんとなく、ごめんなさい。
by nezimakikukai | 2019-03-18 15:15 | 火曜日にはねじをまく。 | Comments(0)

題詠「市」

あいねくらいね海市からとろけだす  妹尾凛

今年のねじまき句会の題は部首「巾」のシリーズである。その第一弾が「市」。その最高点句が掲出句である。モーツアルトのセレナーデ「アイネクライネナハトムジーク」はあまりにも有名だが、最近では米津玄師という選択肢も浮上するらしい。平仮名になっているので「愛ね暗いね」まで想像が及ぶという話も出たが、それはそこはかとなくであって、口にしない程度にとどまるのが私としては好ましく感じられる。題の「市」を「海市」として使うことに惹かれたり、「海市」が蜃気楼であることを知って感動したり(これは俳人には起こらないことだろうが)、読む人の心をひきつける要素がいっぱい詰まった一句だといえそうだ。私は「海市」に「あいねくらいね」が付いた時点で、自分の発想の及ばない世界に惹かれた。自分には思いつきそうにないことを、あたりまえのように見せつけられると、ひれ伏さざるをえない気持ちになるのだ。「とろけだす」に異を唱える意見もあって、それを聞いたときに初めて、自分が最初に何回か口ずさみながら「とろけだす」を気にしていたことを思い出した。それほど、「あいねくらいね」と「海市」の出会いの衝撃が強かったということなのだろう。ある句を選ばなかった理由は、その句を選んだ人も気になっている場合が多い。ここがよかったから、そこには多少目をつぶるということも、是非は別にして起こりやすいことなのかもしれない。


by nezimakikukai | 2019-03-07 23:04 | 火曜日にはねじをまく。 | Comments(0)

しっぽのさきがつんつんあたる

ブリッジは円を目指してしなさいねゆっくりパンにおなりなさいね


『ぷらむ短歌集4』の飯島章友さんの「うまぶくれ」のなかの1首である。

せつないくらいの懐かしさにつかまれてしまう。「目指してしなさいね」「おなりなさいね」

なんて不思議な口調で言われたら、ブリッジしながらパンになっていきそうだ。

他にも、心ひかれる歌をあげてみる。


粉吹きいも粉吹きいもと呟きがとまらぬこれは春の訪れ

昼前の肉屋の店頭コロッケをかっぽれかっぽれ揚げる音する

頑なにみずようかんの水でいる地上が海の底となっても

とおいとおいみらいをおもう箸先で卵の黄身をつついたりして


「粉吹きいも粉吹きいも」と呟いてしまうのは春の訪れのせいであり、昼前の肉屋では「かっぽれかっぽれ」とコロッケを揚げている。「みずようかんの水」って何なんだと思っているのに、「地上が海の底となっても」という断固たる条件が付けられる。「とおいとおいみらい」という不確かなものを思いながら、卵の黄身をつつく。次の一瞬には壊れて流れ出してしまうかもしれないことも予測に含みつつ。

飯島さんは川柳書きでもある。飯島さんの「恐句」からお気に入りの1句を。「恐句」は活版印刷で刷り上げられたこわーい感じのする川柳たちである。

とくりとくとく席に迫ってくる車掌

出会うもの(者も物も)すべてに愛を注ぐ作家さんなのだなあと、つくづく思う。






by nezimakikukai | 2019-02-26 18:42 | 火曜日にはねじをまく。 | Comments(0)

『川柳木馬』第159号より。

変換をするたび海が増えてゆく   清水かおり

「変換」という行為をこんなにもみんながする時代が来るなんて、予想だにしなかった過去があった。平成っ子は、そのことに「え!」と驚くだろう。私が高校生だった昭和真っ只中の頃には、学校でパソコンを学び、老若男女誰もが電話を携えて歩く世の中など考えてもみなかった。すべては変換され、意味を付与され、世界に送り出される。この世のあちこちで次々に絶えることなく変換が起こる。その果てしなさ、変換されるときに、一瞬、空間もぐっとゆがむような不思議な感覚。それは、「海が増えてゆく」ということなのだ。海は増えるものだったか。しかし、この場合は「増える」がぴったりぴったりのなのだと、そのことにも納得させられる。何でもない、だが選別された言葉によって、日常に埋もれている感覚が鮮やかに取り出されるとき、わたしはとても気持ちよく感じる。爽快!なのである。

by nezimakikukai | 2019-02-19 17:32 | 火曜日にはねじをまく。 | Comments(0)

『触光』

野沢省悟さんが『触光』を送ってくださった。手にすると、まるでてのひらに光をのせているみたい!淡いクリーム色の表紙に心惹かれる。頁を繰ると、よく知っている方、どこそこでお目にかかったことのある方や、お名前をしばしば目にする方などが作品を寄せていらっしゃる。あらあらと、とても親近感を覚えてしまう。私自身は野沢さんと親しくお話させていただいたことはないのだが、身近な方から「野沢さんと・・・」とか「省悟さんに・・・」という話を聞く機会がよくあるので、やさしく明るい光を放つ川柳誌の編集・発行人である野沢省悟氏は、厚かましい話だが私にとってすでに親しい方なのである。

戻れないなら桃になる分水嶺    中山恵子
八月の不意に生まれてきたあぶく  青砥和子

中山さんはお名前をしばしば目にする方。青砥さんはねじまきのメンバー。普段とちがう場所で見るせいか、少々雰囲気がちがう気がするのもおもしろい。

だとしたら絵のない絵本でも買うか  野沢省悟

(『触光』59号より)

by nezimakikukai | 2019-02-12 23:25 | 火曜日にはねじをまく。 | Comments(0)

『晴』

あれよあれよともう2月。節分が来て立春も迎えた。ついこの間新しい年がきたと思ったばかりなのに。そういえば、新年の一番最初に手にした川柳誌が『晴』だった。新年早々「晴」は縁起がいいなあと明るい気持ちになった。この本の中で楽しみにしている読み物のひとつが、水本石華さんの「季語を泳ぐ川柳」である。川柳を始めたころに、川柳って何?川柳と俳句はどう違うの?と初々しい疑問を抱くや、「連句をやれば何かわかるかも」と名古屋の連句会・桃雅会(杉山壽子代表)を訪ねて会に参加させていただくようになった。行動が早かったわりに、疑問は疑問のままで今日に至るのだが、そんな情けない私に、諭すように説いてくださる石華さんの文章がしみる。今回の文章のなかで気になった部分をピックアップしてみる。

 ・俳句はその(※季語の)粘りを活用し、川柳はその粘りから自由になろうと
  します
 ・平句としての川柳のフットワーク
 ・(※川柳は)季語の平準化(記号化)へのノンシャランに貫かれている
 ・「平句としての川柳」の複眼思考のメカニズム

渇いた喉においしい水がしみていくように感じながら読ませていただいている。

こおろぎが水道管を覗く真夜  水本石華

by nezimakikukai | 2019-02-05 17:59 | 火曜日にはねじをまく。 | Comments(0)

『ねじまき』♯5

『ねじまき』#5が完成した。印刷所から届いたばかりの表紙を役得で一番に見てしまった。申し訳ないけれど、とてもうれしい。メンバーには20日(日)の新年会での手渡しか郵送。それを終えた21日(月)から、そのほかの皆さんへの発送を開始する。今回の参加メンバーは、なかはられいこ、安藤なみ、青砥和子、早川柚香、犬山高木、丸山進、三好光明、水野奈江子、中川喜代子、猫田千恵子、二村典子、岡谷樹、大嶽春水、妹尾凛、瀧村小奈生、八上桐子、米山明日歌(作品掲載順)の17名。17名の川柳作品とエッセイの他に、八上桐子句集『hibi』の特集、連句作品2巻、句会実況が入っている。今回実況した句会では、逆選を取り入れてみた。みなさんに、楽しんで読んでいただける1冊であることを祈るばかりだ。『ねじまき』#5の御注文・お問合せはnaokobst@k4.dion.ne.jp(瀧村小奈生)まで。1冊500円(税込、送料別)。
by nezimakikukai | 2019-01-15 23:24 | 火曜日にはねじをまく。 | Comments(0)

謹賀新年

2019年が始まった。残り少ない平成。今月半ば過ぎには『ねじまき』#5が完成する。1年に1号というのろのろ運転だが、また一人でも多くのみなさんに読んでいただけたら幸いだと思う。

年末には、通巻260号を数える『杜人』が仙台からやって来た。

空の青手当たり次第放り投げ   鈴木せつ子

空の青は誰の心もとらえる色だ。いろんな青があるけれど、どの青にもそれぞれに心惹かれる。その青を、こともあろうに手あたり次第放り投げるというのだ。不思議。どんな状況なのだろう。並大抵のことではない。青い空を見たときの、心がつんつんするような感覚がよみがえる。つんつんし過ぎて放り投げずにはいられなくなったのかもしれない。美しい空の青色と、それを手当たり次第投げているコミカルな様子とのギャップがおもしろい。えーい!

by nezimakikukai | 2019-01-08 23:21 | 火曜日にはねじをまく。 | Comments(0)

『水脈』第50号

平成最後の師走、『水脈』第50号が届いた。50、五十、ごじゅう・・・。年明けにできあがる『ねじまき』は第5号である。10倍だ!すごいなあと思う。『ねじまき』に50号はあるのか?と考えたら、ぞくっとした。今のペースでいくと、あと45年必要だ。考えてもあまり楽しそうじゃないので考えるのはやめた。なるようになる。
『水脈』第50号から。

僕という迷路をいつも持ち歩く      小林碧水
長女来て雑草剤を撒き散らし       斎藤はる香
くっきりと指紋前世からの手紙      綿引麻見
裸木のニョキニョキ立った森で待つ    落合魯忠
隅っこがお好きさすらうジョン・スミス  中島かよ
ほろ酔いかげんで大胆に捨てる      平井詔子
ドレミファソ南天のど飴神だより     田村あすか
抽斗に眠ったままの果し状        山中一声
この寒さディックミネのビブラート    佐々木久枝
向日葵と南瓜の側にいる安堵       岩渕比呂子
今昔の猫よぶ声のリバーシブル      一戸涼子
胸襟を開く鍵屋が駆けつけて       酒井麗水
ファブリーズここを出るとき戻るとき   浪越靖政

ここ数日、名古屋も寒かった。北海道はどんな寒さなのだろう。おからだを大切に、よいお年をお迎えください。

by nezimakikukai | 2018-12-31 23:00 | 火曜日にはねじをまく。 | Comments(0)



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