月刊 ★ ねじまき 

カテゴリ:火曜日にはねじをまく。( 208 )

ひきだしにしまうかかとの丸い骨   畑美樹

邑書林の『セレクション柳人』をときどき引っ張り出して読んでいる。いつということなく、だれのをということなく。一人の作家のまとまった数の作品を読むことができるセレクションがあることはありがたい。以前にはあまり注意を払わなかった句に惹きつけられたり、もちろんやっぱり好きな句は好きだったりする自分に気づくこともおもしろい。池田澄子さんが書いていらっしゃる畑美樹論も改めて興味深かった。《私性と「わたくし」―畑美樹の樹を嗅ぐ》と題された文章の中で、坪内稔典さんの「たんぽぽのぽぽのあたりが火事ですよ」という俳句と、畑美樹さんの「わたくしのしを嗅いでいる春の部屋」という川柳の比較から、俳句と川柳ということについても触れていらっしゃる。畑美樹さんの句においては、「私」に対する意識が不可欠であり、繊細な心細さを持ちながら自分を中心にす据えることによって、「人間の中のさまざまな私」を描いているのではないかと論じていらっしゃった。池田さんの文章を引用させていただく。
   では、「たんぽぽ」の句は川柳なのか。俳句である。
   説明は難しいけれど匂いが異なる。コレは俳句の匂いだ。
池田さんは「理論的な分析や知識にあまり関心が持てなくて、知的な読み方や物言いがひどく苦手」だと謙遜なさっているけれど、そんなものよりも「匂い」のほうがはるかに説得力も真実味もあることもあると思うのである。


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by nezimakikukai | 2018-07-10 17:22 | 火曜日にはねじをまく。 | Comments(0)

走り梅雨ちりめんじゃこがはねまわる   坪内稔典

梅雨明けが記録的に早いらしい。名古屋はまだだけれど、関東などでは平年より20日ほど早いとか。いろいろ変ではある。なんとなく、「梅雨、川柳」でググってみた。企業やナントカ市の川柳募集だとか、トイレ川柳だとか、バラバラの項目が表示されるが、これまでの「梅雨」という語を含む川柳が網羅されているようなサイトは見当たらない。ため息をつきながら「梅雨、俳句」とググる。当然ながら、「梅雨」という季語を含む俳句を集めたサイトがいくつも紹介される。川柳と俳句の一番違うところはここなのだなあと、改めて実感を込めて認識する。掲句は、「梅雨」の俳句の中で見つけた坪内稔典さんの句。つい、ちりめんじゃこが跳ね回っているところを想像するのだが、ちりめんじゃこはしらす干しのことだから、跳ね回ったりはしない。「走り梅雨」の「走り」がちりめんじゃこを跳ね回らせるのだろう。何やら楽しく、梅雨の鬱陶しさもやや晴れる気がする。
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by nezimakikukai | 2018-07-03 23:09 | 火曜日にはねじをまく。 | Comments(0)

『川柳フェニックス』No.10より(その2)

はっきりと見えないほどの沖が好き    三好光明

※好きなものには、他人にはわからない繊細な条件がつくものだと思う。

横顔にいい味出てるスルメイカ    水野良子

※スルメイカを真横から見たら、きっと1本の線にしか見えない!

今さらに母に聞きたいことひとつ   平子久仁子

※わたしもあります!母ってそういう存在なんだろうな。

モンゴルでリモコン回す染之介    深谷江利子

※草原の乾いた空の下、傘の上を回るリモコン。染之介の満面の笑みは永遠。

続柄に嫁という字はややこしい    高橋ひろこ

※「次男妻」より「嫁」のほうが簡単でよさそうだけど、気持ちがややこしい?

言い違い聞き違い交差して平和    安藤香代子

※「言い違い聞き違い」は殺人事件にもなりかねないので、平和でよかった!

子だくさんト音記号だった母     丸山進

※この句を読んだ途端、ト音記号が妊婦さんの姿にしか見えなくなりました。

タッチ全巻読んだ明日は退院日    水野奈江子

※全26巻読了と退院のふたつの達成感が響きあって満足度100%。

情けない廊下で転ぶ歳になり     北原おさ虫

※「情けない」を「廊下」の修飾語として読みたいワガママをお許しください。

ページを繰りながら思った。瀬戸市は川柳人口の比率が相当に高いのではないだろうか。瀬戸はすごいですね、丸山先生!






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by nezimakikukai | 2018-06-23 22:44 | 火曜日にはねじをまく。 | Comments(0)

『川柳フェニックス』No.10より(その1)

不機嫌な妻がくり出す千日手    太田昌宏

※妻は厄介なものを繰り出すのが常である。妻への優しい視線が好き。

アリバイに毎日ぬか床増混ぜておく  田地尚子

※ぬか床は毎日混ぜなきゃいけないですからね、犯人のはずがない!?

巻き返すデリケートキーを駆使して  高田桂子

※デリートキーを押す度に「デリケート」って思って、そっと押します。

ぼんやりと二人二つの海見てる   松長一歩

※絶対的真理ですね。わたしの海とあなたの海と。

雑念を払うひたすら磨く石    前田トクミ

※なんでもない石をひたすら磨く姿を想像するとかなりおかしい!

ひと手間が省略されて煮崩れる   安井紀代子

※こんなにもあっけなく煮崩れたのはわたしだったりして。

ヌカ味噌がハイジに戻るエアポート   水谷克行

※それは、ヌカ味噌愛というものでしょう。いいなあ。

たとえばいま鳥になったらみえるもの   稲垣康江

※見えるようになるものと、見えなくなってしまうものとのことを考えました。

お見舞いに着て行く強い空の色     安藤なみ

※お見舞いに行くとき、気持ちが必要以上にがんばっていたりします。

小さい「っ」いつかなりたい独り立ち   小川知子

※「なりたい」というたどたどしい表現が「っ」っぽいのかも。

瀬戸から届くとても楽しい句集から、半分紹介させていただいた。
生き生きとした人の声がつまった句集である。





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by nezimakikukai | 2018-06-19 23:18 | 火曜日にはねじをまく。 | Comments(0)

川柳作家ベストコレクション『柴田比呂志』

夏空になるまで青を積み上げる
あおぞらに束になっても敵わない

柴田さんとは、二村典子さんのぺんき句会で初めてお会いした。川柳を書く者どうしが俳句の句会で出会うのだから、御縁とはおもしろい。句集の中には、常に〈青い空〉や〈空の青〉に心を寄せる柴田さんがいる。

いっぽんのポプラのように夢を見る
袋綴じ開けると波の音がする

女の人が少女の心のままでいるというのは嘘くさい気がするけれど、男の人はいつまでも少年の心を持ち続けることができるのかもしれない。

雨の日の新刊書から木の匂い

身の回りのあらゆるものに繊細に反応して句が生まれる。日々を暮らすということが川柳を書くことなのだと再確認させられる句集である。

じれったい距離に私が置いてある

いつだって自分は「じれったい距離」に置かれている。他ならぬ「私」自身によって。だからこそ柴田さんは、「私」以外のすべてを丁寧に見つめたり感じたりして、書くことに向かうのだろうか。

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by nezimakikukai | 2018-06-12 23:01 | 火曜日にはねじをまく。 | Comments(1)

川柳作家ベストコレクション『柴田比呂志』

夏空になるまで青を積み上げるあおぞらに束になっても敵わない柴田さんとは、二村典子さんのぺんき句会で初めてお会いした。川柳を書く者どうしが俳句の句会で出会うのだから、御縁とはおもしろい。句集の中には、常に〈青い空〉や〈空の青〉に心を寄せる柴田さんがいる。いっぽんのポプラのように夢を見る袋綴じ開けると波の音がする女の人が少女の心のままでいるというのは嘘くさい気がするけれど、男の人はいつまでも少年の心を持ち続けることができるのかもしれない。雨の日の新刊書から木の匂い身の回りのあらゆるものに繊細に反応して句が生まれる。柴田さんの句集を読んでいると、日々を暮らすということが川柳を書くことなのだと再確認させられる。じれったい距離に私が置いてあるいつだって自分は「じれったい距離」に置かれている。他ならぬ私自身によって。その自意識が、「私」以外のすべてを丁寧に見つめ感じて、書くことに向かわせるのだろうか。
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by nezimakikukai | 2018-06-12 23:00 | 火曜日にはねじをまく。 | Comments(0)

5月の句会結果について

5月の句会結果のまとめ方がいつもと違うので、あれ?と思われた方もいらっしゃるかもしれない。『ねじまき』#4で、句会における高得点句について語りあったのだが、#5でも引き続き、高得点句についてさらに検証し考えてみたいと思っている。そこで、5月は題詠「答」に1句だけ投句することとし、選に関しては、自分で1番から4番まで順位をつけて、5点、3点、1点、1点を入れる方法をとった。そして、結果報告には、合計点とその内訳を示した。さらに5月の句会では、それらの句と選について語り合った。もう一度8月に機会を設けて議論を深め、5月か8月の議論の内容を吟味したうえで、句会実況として掲載する予定である。点数に傾斜をつけたことで、同じ人数が選んでいても合計点が違ってくるのは、目に見えるこれまでとの大きな違いである。では、5点を1人が入れることと、1点を5人が入れることの違いをどう捉えるのか、今回はそこまでは議論が及んでいなかった。隔靴掻痒の趣は否めないというのが、全員の共通の感触だったようで、どこからともなく「リベンジ」の声があがった。で、もう一度の8月なのである。なぜだか不思議な期待感のようなものが湧いている。
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by nezimakikukai | 2018-05-29 22:32 | 火曜日にはねじをまく。 | Comments(0)

『水脈』第48号より。

『水脈』は北海道の柳誌である。北海道江別市。10年ほど立て続けに夏になると北海道に行った時期があったけれど、函館、小樽、札幌、苫小牧しか知らない。雑誌が届くと、知らない遠い土地がうんと近く感じられる。えべつ。

裏声になるまでまぶす郷ひろみ   落合魯忠

郷ひろみさんの声は独特だったけれど、裏声がまったく想像できない。だから、郷ひろみをまぶしても裏声になれないんじゃないかと心配になってくる。ということは、まぶしてもまぶしても裏声になれなくて…。はてしのない徒労感がおもしろい。そういえば、郷ひろみさんは歳をとることが想像できない方でもあった。今もやはり、裏声はなさそうである。

姉が編んだセーターアンダンテカンタービレ   田村あすか

6・4・5・6の21音なのだが、リズムは悪くない。撥音や伸ばす音が多く混じっているせいだろうか。お姉ちゃんがセーター編んでくれたんやけど簡単やったって。などと翻訳してみたりして楽しかった。

しゃちこばるなよ遠近の冬   一戸涼子

遠近と言えば一番に思いつくのが遠近両用レンズというのは、加齢のなせるわざ?遠近両用レンズが必要な眼は焦点が合いにくくてぼやける。しっかり見ようとしゃちこばる。もちろん、冬の景色もしゃちこばる。江別なら名古屋よりもっと。遠くの景色も近くの景色も寒々と凍っているだろう。遠江の冬は温暖そうだが、近江の冬はそれなりに手ごわい。「遠近の冬」が不思議でいろんなことを考えてしまった。

さくら餅うぐいす餅と橋渡る   酒井麗水

春だ!それだけでうれしい。「さくら餅うぐいす餅」のうきうきした感じは、スキップでも始めそうだ。橋を渡るという行為は、何かしらの変化をもたらす。橋の下には水の流れる音。一句が、「春」と歌っているように思われる。

あれそれとフリーズドライされたまま   浪越靖政

一番出てこなくて一番困るのは名前である。「あれ」や「それ」が多くなって、夫婦で「あれそれ」言っていると本題を忘れて大笑いしてしまうことがある。でも、フリーズドライだったんですね。腐ったりせずに長持ちするし、持ち運びも便利そうだし、じゃあ安心。フリーズドライして「あれ」にしただけなんだから悲観することもない。フリーズドライしておこう!

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by nezimakikukai | 2018-05-22 22:54 | 火曜日にはねじをまく。 | Comments(0)

レトリックについての断片

野内良三氏の『レトリックと認識』の中から、気になったいくつかの断片(※)を引用する。あるときには、何の気もなく通り過ぎていた言葉が、別のときにはとても近しく感じられることがある。

※レトリックは世界(自己)を「語る」ための技術であるだけではない。世界を「発見する」ための方法でもある。世界を「読む」ための方法でもある。

※私たちの日常の発話は手垢にまみれた「慣用表現」からなっている。私たちは他人がすでに使った言葉を引用しながら、自分のおもいを表現する。ほとんどの場合はそれで十分に用は足りる。

※ところで、言葉というものは意外に融通無碍なものである。ふだん結びつかないものでも強引に並べてみると何となくそれらしい意味を帯びてくる。「冷たさ」と「情熱」とは常識的には矛盾する概念である。しかし「冷たい情熱」という言い方はある条件下では立派に通用するはずだ。

※現代レトリックは「世界/テキストを読む」認識者の立場を強調する。想像力を羽ばたかせると、この世界の事物間には思いもかけなかったような関係が結ばれることになる。それは新しい物の見方に通じる。

レトリックは単に効果的な表現のための技術ではなく、私たちに世界の新しい見方を示してくれる〈可能性〉なのだと思う。

  

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by nezimakikukai | 2018-05-15 23:16 | 火曜日にはねじをまく。 | Comments(0)

4月の最高点句。

4月句会の題詠、雑詠の最高点句を振り返る。まず題詠から。題は「第」。

ラジオ体操第二までする町工場   早川柚香

ラジオ体操の「第二」が読み手を引き付け、「町工場」との組み合わせが郷愁をそそる絶景ポイントになったようだ。たしかに昭和人をくすぐる景色である。町工場の経営者の人の好さや、実直でつましい人々の暮らしぶりまで感じられて、いい雰囲気なのだ。ラジオ体操の第二に目をつけたところ、町工場という設定、どれもおもしろい。しかし、この句を選ばなかったなかはられいこさんの一言が何ともシャープだった。

「ラジオ体操第二からする町工場」だったら選んだかもしれない。

「まで」が「から」に変わるだけで世界の重力が変わる。助詞の偉大さを痛感するとともに、簡単に句をできあがらせてしまわないことの大切さを再確認した。

雑詠の最高点句はこちら。

しらばっくれてもつぶつぶまで苺   猫田千恵子

キュートな句である。しかし、苺を題材にしても決して甘ったるくはなっていない。その加減が気持ちよい。しらばっくれる苺…あ、あたし苺じゃないですから、ぷちぷち。ごまかしてもダメダメ、つぶのつぶまで、どうみたって苺、バレバレなんだから。かわいいけど、おかしい。


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by nezimakikukai | 2018-05-08 23:27 | 火曜日にはねじをまく。 | Comments(0)



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