ゆるゆるのパジャマのような思いやり 平子久仁子
ぴっちりタイトなのはしんどいので、ゆるゆるはありがたい。ありがたいのだから、思いやりと言える。言えるがしかし、パジャマだからタイトなはずもなく、だいたいがダボっとしている。それのゆるゆる版って、ほんとうに必要なの?普通でいんじゃない?ってことは、相手の気持ちはわかるし、その気持ちにありがたさは感じるものの、実は要らない思いやりってことなんじゃないだろうか。いや、もう、わたしもそこまでは必要ないですから、大丈夫ですから、と言いたくなってしまう種類の思いやりもある。「ゆるゆるのパジャマ」は状況を十二分に伝える比喩だ!それにしても、パジャマを買わなくなってから久しい。昔は夜に眠るときは、〈ぜったい〉パジャマに着替えたのに。
ゆっくりとほどいています長い夜 三好光明
この「長い夜」は一人で過ごしている長い夜のような気がしなくてほっとする。「ゆっくりとほどいています」と語りかける口調のせいだろうか。寂しく孤独に耐えている夜のことなら、こんなふうに誰かに伝えられそうにないから。毛糸をほどくとき、両手を出して巻き取ってくれる相方のような人が、長い夜を一緒にすごしているのだと思う。ひとりぼっちでなかなか明けない夜を過ごしていたら、なんだか焦ってこんがらがってしまいそう。あたたかく明るい夜の風景だ。