月刊 ★ ねじまき 

川柳作家ベストコレクション『奈良一艘』

青森の奈良さんには一度お目にかかったことがある。何年か前の青森の6月だったと思う。ひんやりした朝の空気とか、ライラックの香りとかがよみがえるのを感じながら句集を開いた。

葉桜のざわつく指は捨てなさい
ぜんまいのやがてくしゃくしゃな黄昏

「の」の使い方に注目したい。「葉桜のように」「ぜんまいのように」と比喩の意味で使われる古語的な用法だととらえてはどうだろうか。「の」が全体のリズムを整えているように思われる。

サイレンが過ぎたら続き教えましょう
水音のする引き出しから閉める

サイレンに導かれる静寂。引き出しが閉められると消える水音。確かに存在した音より、その音が消えたあとの静寂に引き込まれる句だ。

ギルティオアノットギルティ セロリが好きだ

アメリカ映画で聞いたことのある台詞だ。独特の抑揚とよく通る声。「セロリが好きだ」との落差が適度である。好きだと宣言するものとしてのセロリもちょうどよい感じがする。

鮭茶漬けちちをころしてきたところ

鮭茶漬けをかっこむ音がする。殺人のあとに鮭茶漬けは似合うかもしれない。「ちちをころしてきたところ」とひらがな表記であり、実際に殺すのではないと読むべきだろうから、父と息子の葛藤なのだろうか。そういえば永谷園のお茶漬けのCMの男の人は誰だったんだろう。きっとあのイメージが重なっているのだと思う。

第一章 阿阿阿
第二章 吽吽吽

奈良一艘さんの句集のあちらこちらから音が聞こえてくる。喧騒と静寂。まず音が耳から取り入れられる。インプットされた音に反応して言葉が紡ぎ出され句となる。小気味よいリズムと発想の飛躍がそこにある。 

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by nezimakikukai | 2018-03-29 23:29 | Comments(0)
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