月刊 ★ ねじまき 

『晴』より。

樋口由紀子さんの20句のタイトルは「空腹」である。もちろん、食べ物がいろいろ登場する。生椎茸も大根もケチャップやマヨネーズも親しい日常そのものであり、だからこそ、そこから不意にかたちをとって現われてくる何かがある。由紀子さんが、それらに言葉を与える。

蓮根によく似たものに近づきたい

蓮根の穴は深遠な通路だと思うけれども、「蓮根によく似たもの」であって蓮根ではない。そのよく似たものになりたいわけでも、なるわけでもなく「近づきたい」のだ。こんなに曖昧なのに、なぜかわかった気がしてしまうのがおもしろい。「蓮根になりたい」と言われても、何とも思わないのに、「蓮根によく似たものに近づきたい」と言われると腑に落ちるものがある。この不思議な感触を楽しみたい句だ。「そうですか、やっぱりあなたもそうですか。わたしも、そう思うんですよね。」という声がしてくるような気がするのである。

広島やキャベツの千切りつながって

広島と言えば、お好み焼きのキャベツ。これでキャベツの所属が明確になって、姿かたちやら匂いやらがリアルになった。で、「つながって」どうなのか。いや、たぶんつながっている感覚を実感すればよいのだと思う。この中途半端な収拾のつかない気分を五七五を読みながら共有できることが楽しいと思うのだ。意味や説明をくっつけずに、わたしとあなたがつながる楽しさを感じる。

手に葱を持つのは少し早すぎて

そう、葱を持ったら、由紀子さんはもうきっと無敵である。



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by nezimakikukai | 2018-02-06 23:23 | 火曜日にはねじをまく。 | Comments(0)
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