黒川利一 *自転車で6分の菜園へ 鶺鴒は尾であいさつの首夏の朝 角曲がるあの世の友とすれちがう 草を抜く鎌をさしたり刺されたり 神になり静かに苺選りわける 深呼吸コロナゼロです若葉風 三好光明 *菱野団地 泣き声は元気なぽっぽ保育園 はちまん小赤白ツツジ姦しい 自慢げにバラが咲いてる医者の庭 行列の「ほっとけないよ」パン屋さん 3千歩出会えたマスク二人だけ 安藤なみ *名古屋学院大学 UFOの基地に学舎を取り揃え アフロディテ蒸発新緑の夏日 自販機はたぶんあちらの白鳥座 スケボーがあったらいいな黄金比 ハイ出ます、また来ます八咫烏さま 丸山進 *孫守吟行 三密を食べてブランコ滑り台 嬉々として小川に石を投げ続け ハイハイで階段登り降りられない 大人には見えない蟻を追っている 卓袱台をひっくり返す味覚え 中川喜代子 *スーパーとベランダ 一メートル開けて水だけ二本買う 三角の止まれが読める犬二匹 強風の苦手な旗をなぐさめる 顎のせる手にワセリンをぬっている すたすたと母の日が行くおーい雲 竹尾佳代子 *亀山あたり 青空へエンジン響くお茶を摘む グラデーションの茶畑渡る若葉風 紫陽花のかすかな蕾遊歩道 満面の笑み芍薬がこぼれそう 絡まれてスイートピーは花の乱 犬山高木 *犬山の裏町から木曽川堤へ 迷宮校舎発熱する欅 放課後サイ追って帰る道緋色 スキップして帰るマドンナ墓の裏 象の雨ふる葦原にアサヒビール へび鳴いてひたすみどりの大理石 岡谷樹 *奈良公園 罠だとしても新緑に身を任す したたかに春日の森の藤のつる 神の子として鹿の子すくっと立ち上がる 大佛の咳と大佛のくしゃみと 出口戦略がらっと開けて行き止まり 青砥和子 *ドラッグストアとコンビニへ 解体の手を止め会釈イラン人 ブロック積む職人の手にハハコグサ 大八を引く青年が売る和菓子 吟行銀行用事いろいろ歩を稼ぐ 「アベノマスクまだ来ないね」とライン来る 瀧村小奈生 *扇川に沿って この町の音だとわかる水の音 コイトカメコイコイトカメ水括る マダとモウのあいだに架かる平手橋 魚を釣る人は正しく隔てられ メゾフォルテ保って練習曲つづく 米山明日歌 *農協まで 石の影 葉の傾きに春をみる 梅の実の落ちない方にコツをきく アカシアの下で一瞬迷う路 目をあわせぬよう見る 蜥蜴の青は 空豆三粒「補助輪とれた」メールくる なかはられいこ *バス通りを公園まで 影が居る外階段の三段目 マスクして息して歩く並木道 この息は芍薬となるさみだれて 雨の音かたち整う瞬間の みずっぽくなったでしょうと言うポスト 二村典子 *ローソンまで 新緑のここは一ツ木給水塔 門を出て門を閉めるまで日雀 躑躅こんもりチーズまるかじり どこからみても美人歩道をふさぐ 天候の変化つぶさにみて早桃 妹尾凛 *神戸港 長すぎるお散歩うわの空ひくく 親しい友人のような古本屋 あてもなくあるく五月にあきてくる ペパーミントの信号塔に迷子 このへんで五里の霧中のものうさ 早川柚香 *中学校校庭 何事も素知らぬ顔で鳴るチャイム 無人のグランド無敵の五月晴れ 校舎裏密に密かに伸び放題 ひたすらに蹴る・撃つ・(笑う)・走る・跳ぶ 非常時でベテラン教師には日常 猫田千恵子 *半田赤レンガ建物 せわしない初夏の揚羽のうす緑 足元の青い小さな花言葉 自転車に初めて乗れた日ははるか 爛漫に油断を誘う野ばらの香 赤レンガ未だ開かぬ木の扉 八上桐子 *ショッピングセンター「つかしん」へ 芍薬のうたいはじめる鳥の胸 ことばの日の噴水雨に濡れている 閉店の貼り紙を読む傘の青 マスクから離れて音に還る雨 鵯の声に五月が削られる #
by nezimakikukai
| 2020-05-28 14:04
| 句会結果報告
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バーボンを呷りピストル欲しくなり 今川乱魚
沢田研二かー!と反応する私もギトギトの昭和人である。勝手にしやがれ!といういい加減さとかサムライみたいな格好のつけ具合が昭和的なのだ。ついでに「仕事もなけりゃピストルも買えねえ」憂歌団の嘆きも思い出してしまう。 ファイトマネーを妻に貰って朝を出る えびフライえびの無念を尾に示す トホホなお父さんの姿をさらしても嫌味がない。受けを狙っていないとわかるから。シンプルな哀しみが伝わってくるから。 春浅く芽吹くものみなほろにがし と感じる繊細さをもったオジサンだから。 「まじめ語録」の中には、乱魚さんがが好きな「ドライ・ユーモア」が箇条書きで規定されていて、とても興味深かった。思いがけない出会いは意外なところに用意されている。角を曲がるのは怖くて期待に満ちている。
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by nezimakikukai
| 2020-05-14 14:00
| 火曜日にはねじをまく。
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題詠「 @ 」
1 歴史的改元案件@自粛/猫田千恵子 (1票:安藤) 2 @マークおでこに貼ってテレワーク/なかはられいこ (10票:瀧村、丸山、八上、青砥、岡谷、安藤、早川、竹尾、猫田、櫻井) 3 篩から零れて跳ねた@芒の青/早川柚香 (2票:三好、米山) 4 志村けんのヒゲダンス@定型/青砥和子 (4票:犬山、丸山、米山、早川) 5 昭和から令和@損益分岐点/三好光明 (1票:岡谷) 6 落とし穴が三つ@領収書/米山明日歌 (5票;黒川、三好、岡谷、なかはら、櫻井) 7 君と出会う@秘密基地/竹尾佳代子
8 衛星になるたこ足の@/岡谷樹 (6票:妹尾、八上、三好、安藤、竹尾、猫田) 9 @故人の表札のまま春/黒川利一 (6票:瀧村、八上、安藤、竹尾、猫田、櫻井) 10 リゴリスティクな血@yukibitokaerazu/犬山高木 (2票:黒川、中川) 11 見て見てみ@メル友画像5万件/丸山進 (1票:青砥) 12 すーすーとかなしいのかも@MINTIA/瀧村小奈生 (7票:犬山、黒川、妹尾、早川、猫田、中川、櫻井) 13 @@で爆発/八上桐子 (2票:なかはら、中川) 14 色即是空@浅間の朝もや.com /中川喜代子 (3票:黒川、妹尾、竹尾) 15 まぶたまんかい@まだ桜まんかい/妹尾凛 (10票:犬山、瀧村、丸山、八上、青砥、三好、米山、岡谷、早川、 なかはら) 16 訂正 電柱の@は蝸牛です/安藤なみ (8票:犬山、瀧村、丸山、妹尾、青砥、米山、なかはら、中川) 雑詠
1 約束は致しかねます春岬/黒川利一 (4票:妹尾、八上、米山、櫻井) 2 取説通り高か目に上げておく利き手/岡谷樹 (3票:早川、なかはら、中川) 3 春雷に呪文が解けるピスタチオ/竹尾佳代子 (9票:犬山、黒川、丸山、妹尾、八上、米山、岡谷、安藤、猫田) 4 とぎれだす話にネギをいれる役/米山明日歌 (15票:犬山、瀧村、黒川、丸山、妹尾、八上、青砥、三好、岡谷、安藤、 竹尾、猫田、なかはら、中川、櫻井) 5 強風とも懇ろになる棒磁石/三好光明
6 消してまた書く予定帳鉛筆で/早川柚香
7 二の足を踏むなコンチネンタルタンゴ/瀧村小奈生 (5票:犬山、丸山、青砥、早川、竹尾) 8 スクラムをもう忘れたか日本人/丸山進
9 つぶやきが怒涛となってゆきやなぎ/なかはられいこ (11票:瀧村、黒川、八上、青砥、三好、米山、早川、竹尾、猫田、中川、 櫻井) 10 ゴミ入れと花瓶明日には入れかわる/安藤なみ (2票:三好、なかはら) 11 午後ふかく行きずりの花林糖/妹尾凛 (2票:米山、安藤) 12 目覚ましで慌てて起きる共和国/青砥和子 (3票:犬山、瀧村、猫田) 13 臓器提供、洗濯物はなまかわき/中川喜代子 (3票:青砥、安藤、竹尾) 14 ひばり飛ぶしたくちびるにちょんと触れ/八上桐子 (5票:妹尾、三好、岡谷、なかはら、中川) 15 くすぐってシャウエッセンはおしゃべりで/猫田千恵子 (2票:黒川、早川) 16 ナイトホークス鎖骨のない女/犬山高木 (4票:瀧村、丸山、岡谷、櫻井)
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by nezimakikukai
| 2020-05-06 23:39
| 句会結果報告
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コロナウィルス感染症の影響で4月もねじまきはメール句会となった。現在、作者名を非公表のままメーリングリストでそれぞれの句について語り合っているところ。先月はそれぞれが選んだ句についてコメントを出すだけで終わってしまったので、今月はいつもどおり選ばなかった句についてもコメント中。そんな事情でGW明けに句会結果の報告ができればという進行状況になっている。今年は題詠で記号に取り組むというチャレンジを決行したのに、リアル句会がままならないのは残念だ。4月の題は「 @ 」。題をどのように捉えたり扱ったりして句を詠むかもそうだが、選句のときにどう考えるかもおもしろい。 3月の題「 。 」から2句。 しました。ました。してました。またしてた。 二村典子 「またしてた。」のキュートさがたまらん! 春(遺伝子組み換えでない)が来た。 櫻井誠
今のところ(遺伝子組み換えでない)の最高峰! この題がなかったら出会えなかった楽しい句、おもしろい句と遭遇できるのだから、今年の題は成功じゃないのかなあと思っている。悩ましいけど。 #
by nezimakikukai
| 2020-05-05 14:44
| 火曜日にはねじをまく。
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音立てて流れる赤という静寂 笹田かなえ 「音立てて」「静寂」が流れるのだ。この逆説を読み手は何の矛盾もないかのようにいとも簡単に受け入れてしまう。それは圧倒的な赤のせいだろうか。夕日の赤に支配される時間。その静寂の中に立っている。私の中にもいつかの日の同じ記憶があるように思われる。句の中に流れる時間を作者と共有することができる。これも、ひとつの共感性といえるのかもしれない。 信号の赤の間は浮いている 中川喜代子 こちらはワンポイントの赤。信号待ちの間はすることがないのだ。じーっと見つめる赤信号。じーっと一点を見つめていたら、ふおんと体が浮いたっておかしくない(ってこともないけど、そんなことがあってもいい)。一人で横断歩道の前に立って信号が変わるのを待つ間の何もない時間。青に変わったらすべてが動き出す。動いている時間と動いている時間の狭間の無の時間にスポットを当てているところがおもしろい。 『川柳文学コロキュウム』発行人の赤松ますみさんにも、もうずいぶんお会いしていない。耳の後ろのあたりにますみさんの声がして、急にお目にかかりたくなった。コロナウィルス感染症は人恋しさも倍増させるようだ。終息したら、ますみさんにもきっとお会いしたい。 #
by nezimakikukai
| 2020-04-28 23:07
| 火曜日にはねじをまく。
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