月刊 ★ ねじまき 

カテゴリ:火曜日にはねじをまく。( 177 )

かなかなの夜。

8月の題詠は「顔」。

ふと真顔かなかな夜の草書体   妹尾凛

何を言っているわけでもない。ふと真顔になる自分に気づいた一瞬、かなかなの鳴き声。あるのはそれだけだ。かなかな→仮名→草書体という流れをつなぐのは「夜」であり、ふと真顔になったのも夜の一瞬だろう。そう考えると「夜」の一語の必然性が見えてくる。なんだかんだ、ごちゃごちゃと考えてはみるものの、音としての言葉の流れとリズムに素直に身をゆだねる気持ちよさに心は傾斜する。フトマガオカナカナヨルノソーショタイ・・・透明感のある夜の闇色にくるまって脱力してみるのもいいんじゃないだろうか。
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by nezimakikukai | 2017-09-05 23:10 | 火曜日にはねじをまく。 | Comments(0)

「垂人」31

広瀬ちえみさんの「春の警笛」(20句)から。

もうなにがなんだか春になっている
ざわざわとしている春の道具箱
警笛を鳴らして春のトンネルへ
春うらら鶏冠をつけるのを忘れ
こんなめもあんなめもまつはるだもの

春の句が並ぶ。「春の」と付くことで「道具箱」も「トンネル」も何かしら違う貌を見せる。春は、のんびり、ゆったり、ぼんやり、だと誰が言ったのだろう。「なにがなんだか」「ざわざわとして」「こんなめもあんなめも」ありまくるのが春だ。待ちこがれていたせいで手につかない何か、心に追いつかない体、言葉がつかまえきれないもの。春はわさわさと通り過ぎる。ちえみさんの繰り出す言葉のスピード感が、私に〈その感じ〉を確かによみがえらせる。
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by nezimakikukai | 2017-08-29 22:51 | 火曜日にはねじをまく。 | Comments(0)

走る稲妻。

夕方、急に黒い雲がひろがってきた。空はみるみるうちにイカスミ色になる。ゴロゴロと雷が鳴りだしたかと思ったら、空に鮮やかな稲妻が走った。ほら、あそこ!ほら、今度はこっち!一瞬のうつくしい閃光。いつのまにか空の色が変化している。不穏に赤い。キツネの嫁入りの夕暮れ版みたいになってきた。誰かが「じゃあ虹が見える?」と言う。荒れた天気と虹はうまく結びつかなかったのだが、どうやら本当に虹が出たようで、別のひとりのケータイに画像が送られてきた。ぼんやりとした不思議な虹。お天気が変だという話題が日常的になっている今年の夏である。

稲妻のいっしゅん錆びているところ   なかはられいこ
いかずちを掴んで空に投げかえす    ながたまみ

きょう空に走った光を見ていて、かつての句を思い出した。ふだんは記憶の奥に眠っているけれど、決して忘れてしまったのではない時間に触れたようでうれしくなる。  
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by nezimakikukai | 2017-08-22 23:21 | 火曜日にはねじをまく。 | Comments(0)

残暑お見舞い申し上げます。

台風がのろのろと通って行った昨日は立秋。季節のご挨拶をしてみて気づいた。ザンショオミマイモウシアゲマスは七七である。「金鳥の夏、日本の夏」というCFも七七だなどととりとめのないほうに思考は流れていく。
そういえば昨日高知から「川柳木馬」が届いた。2017・夏の号である。

フリーダイヤルだから渦巻いてみる   清水かおり

フリーダイヤルだからくだを巻いたのか?酔っぱらってくだまいて渦巻いて。なんか楽しそう。ヨクキクキンチョウコウの緑の渦がぐるぐると回り始める。「お客様相談係」は五七だ。「向こう三軒両隣」は七五だけど。日本語にはほんとに五音と七音の組み合わせが多い。やっぱり川柳やるしかないなと、きょうのところはそんな結末で。
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by nezimakikukai | 2017-08-08 23:09 | 火曜日にはねじをまく。 | Comments(0)

不良少女カンナ。

カンナカンナ素っ頓狂にぐれている   青砥和子

7月句会の雑詠から。カンナはやっぱりぐれているでしょうね。まずあの色がね。それから花の形状の何とも形容しがたいところも。周囲からちょっと浮いている存在感なんかも。実はそのぐれ方は素っ頓狂。調子っぱずれで間が抜けてて、でも悪い子じゃないってことはきっとわかってもらえると思うんです・・・なんて。「素っ頓狂」とか「ぐれる」とか、意外にレトロな言葉が似合うカンナなのです。

ここで改めて思うのは「素っ頓狂」という言葉の持つパワー。ぴったりだと思おうが、若干の違和感を感じようが、とりあえず引っ張り込むぐらいの力はあるようだ。音韻も字面もなかなか個性的である。「カンナカンナ」の繰り返しから「素っ頓狂」へ続くリズムも楽しい。絶対ぐれたことなんかなさそうな青砥さんのカンナ愛を感じる一句である。
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by nezimakikukai | 2017-08-01 23:07 | 火曜日にはねじをまく。 | Comments(0)

7月の「頭」

前頭葉ななにんがけのななつぶん   瀧村小奈生
頭からバリバリいった理想論     猫田千恵子

11点句と10点句。7月の頭2句である。両方を選んでいる人と片方だけの人が半々くらいで、瀧村が猫田の句に、猫田が瀧村の句に票を入れていないというのもおもしろい。つまり、傾向あるいは好みの分かれる高点句ということになりそうだ。句会の高点句が必ずしも優れた句だとは限らないというのは周知のことだが、高点句に対して選ばなかった理由が語られるのは、ねじまき句会のよいところだと思っている。「なんだかわからないけど、よかった。」みたいなところで終わらずにすむという点で、作者にとっても、それは幸運なことではないかと思う。
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by nezimakikukai | 2017-07-25 23:28 | 火曜日にはねじをまく。 | Comments(0)

金曜日です!

なぜ、きょうが金曜日なのか。火曜日はどこにいってしまったのか。完全に火曜日を通り過ぎてしまったことに気づいたばかりで動揺している。海の日のせいで曜日がわからなくなったとか、暑すぎるせいだとか、いろいろ言い訳しようとしてみたが、納得のいく言い訳などあるはずもない。本当に申し訳ありません。ごめんなさい。恥ずかしい!
こんなときはいろんなことを言ってみよう。

げんこつをまるくなるまでなめてみる  ながたまみ
とおまきにはるまきをみるかっぱまき  二村鉄子
いかんがなあきまへんがなひきがえる  魚澄秋来

ひらがなの優しさが身に染みる日である。 
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by nezimakikukai | 2017-07-21 16:13 | 火曜日にはねじをまく。 | Comments(0)

「川柳杜人」70周年記念句会。

11月4日(土)に「川柳杜人」の70周年記念句会が行われる。そしてこの句会は、山河舞句追悼句会でもある。舞句さんに初めてお会いしたのが去年の秋。それが最初で最後になるとは夢にも思わなかった。一度聞いたら忘れることのできない素敵な声と穏やかな物腰が印象的だった。「杜人」254号は舞句さんの追悼号になっていて、はじめて舞句さんの川柳をまとめて読ませていただいた。

海を見たくてタイムカードを押している

タイムカードを押す日常を繰り返しながら海に誘われる心。でも海に行くことはなく、休まずタイムカードを押し続ける日々が続く。タイムカードを押すたびに潮騒を聞き、潮の匂いをかぐ。海を見たくてタイムカードを押すというのは、こういうことなのだろうか。

パチンコ屋の灯りだあれがニッポンだ

こんな句も。思わず、西岡たかしの「遠い世界に」を思い出した。そういえば二人は同じ世代かも。「まぼろしの翼とともに」と歌ったフォークソング歌手と共通のスピリットを抱えていらしたのだろうか。

コロッケを2個お願いという電話

2個をどうとらえるかがおもしろい。2個だから生まれる誤解。頼まれたほうは、相手と自分の1個ずつだと信じて疑わない。でも実は頼んだほうは、自分が2個食べたかったのだ、とか。舞句さんなら1個ずつだと思い込みそうだなあ。優しくて、ちょっとさびしそうな表情が浮かぶ。

舞句さん、11月に仙台に会いに行きますね。
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by nezimakikukai | 2017-07-11 23:17 | 火曜日にはねじをまく。 | Comments(0)

アリスの頬もデーモン閣下の頬も。

6月の題詠は「頬」。「頬」の文字を含む句が20句ずらりと並んでいる様は何やらおもしろい。まさに頬、頬、頬の図である。普段は見られない「キス」だの「恋」だのという単語も飛び出して、「頬」という語の持つ力を改めて知ることとなる。ふっくらと紅をさしたアリスの頬もあれば、白地にグレーで区切られたデーモン閣下の頬もある。なかなかやるなあ、頬。20句の中でもっともシンプルだと思えるこの句に心ひかれた。

頬骨のカーブが同じ顔二つ    猫田千恵子

この二つの顔は血縁者だろう。「頬骨のカーブ」という繊細な部分がまさに同じなのである。だからどうというわけでもなく、作者は同じ顔が二つあるよと言うだけだ。それで十分伝わってくるものがあることがおもしろい。同じだとうれしいとか嫌だとかでもなく、同じだという厳然とした事実がある。頬骨のカーブや、薬指の傾き方や、背中の肉の付き具合など、同じとしか言えない何かに気づいたときの感慨がまざまざと伝わってくる。
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by nezimakikukai | 2017-07-04 23:44 | 火曜日にはねじをまく。 | Comments(0)

靴眠るあるじの足の形して    丹下純

どうということのない日常が気負いなく切り取られている。靴は玄関に脱がれたままの形で置かれている。人は寝静まった頃だろう。そこには書かれていない薄暗い闇と薄明るい光まで感じられる。「あるじ」という言葉が靴の持ち主の不在を鮮やかに意識させる。句会での読みでは、「あるじ」は亡くなった方だという読みと、そうではないという読みとがあったが、それはどちらとも考えられるし、読者に委ねてよいと思う。「眠る」という言葉が死を連想させるのだと思われるが、必ずしも死者に限る必要もないだろう。玄関で眠る靴には確かに「あるじ」がいた。そこには「あるじの足の形」が明らかに存在する。しかし、「あるじ」は不在である。その不在または喪失の感覚がこの句の中心ではないだろうか。読んだときに、ネムルのルからアルジのル、アルジのアからアシのアへとつながる音とリズムが心地よい。わかりやすい言葉で場面をわかりやすく描きながら、奥行きがあり、受け取ることのできる情報量の多い句である。
丹下純さんは、5月からねじまき句会に参加したニューフェースである。とは言っても、朝日新聞の東海柳壇の常連でもあり、お名前をご存知の方も多いにちがいない。純さんの参加でねじまきはいっそうパワーアップしている。
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by nezimakikukai | 2017-06-27 23:12 | 火曜日にはねじをまく。 | Comments(0)



川柳句会「ねじまき句会」の公式サイトです
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